『ボーッ』のロングトーンと潮の香り。

出来たばかりの吹奏楽部は、まだメンバーが少なくて、各パートに一人か二人。先輩もいないから、適当に、でも真面目にロングトーンをしていた。テニスコートの裏は松林で、海に通じる道があった。楽器のために潮風はよくないけれど、土曜日などは、海に向かって音出し。(校外に出ちゃってよかったのかな)

博多湾を通る渡船の名前は「おとひめ」や「うらしま」だったと思う。近くに渡船場があるので、必ず汽笛を鳴らす。『ボーッ、ボーッ』「あ、この音を聴いて!同じ音を吹いて‼」と金管の生徒に指示をだす。

探り吹きをしながら、ホルンやユーホニュームの子が近い音をだした。「おお~」

若いころの懐かしい思い出。あの頃の生徒はいま、どうしているだろう。

佼成出版社「うみべのいす」より