伊藤良子先生、お元気でいらっしゃいますか?
父の仕事は、一週間ごとの三交代制だったから、夕方帰ってくるのはいつものことではない。逆上がりのできない小1の娘のために、数日、小学校の運動場で練習につきあってくれた。それを職員室から見ていらっしゃった先生が、「やすこちゃん、お父さんといっしょに鉄棒の練習にきていたね」 と。
運動の苦手な私は鉄棒も跳び箱もきらいだ。
鉄棒のテストの時にうまく出来たかどうか覚えてないけど、そのときの通知表の体育は12年間のうちで一番よかった。相対評価なんて無い時代だったから、努力点だね。
やさしくて、きれいな伊藤先生、ありがとうございました。
お別れするとき、色紙に 「雨だれ 石をうがつ」 と書いてくださった。こころに残る初めての言葉だった。
それにしても、下の名前を「ちゃん」づけで呼んでもらっていたんだなぁ。今は男女とも「さん」づけだけど。
3歳の孫は足抜き? 5歳の孫は、難なく逆上がりができる。 保育園の指導と生まれ持った能力のおかげ。
ありがたいね。
作:新井 洋行 絵:嶽 まいこ 「すきなこと にがてなこと」より