牧のうどん で ふうふうふう。

亡くなったおじいちゃんが、いつも言っていた。「温かいものは温かいうちに食べたい」

食が細くなったおばあちゃんの食べたいものは「牧のうどん」

お店に行くことはかなわないし、施設の部屋では火は使えない。でも、お持ち帰り用セットがある。

スープは温めて保温水筒に。麺は部屋のティファールのポットで半玉ゆでて、おつゆ茶碗に入れた。ねぎや天かすをトッピングして完成。ふうふうしながら、おいしいと言って食べてくれた。

 

実家にはいつも食材があふれていて、「ご飯まだやろ?」とちゃっちゃっとご飯の用意をしてくれた。

「食べていかんね。」が口癖だった。

少し前の母なら「あんたの分は?」と心配するのに、ひとり黙々と食べる母がちょっと哀しかった。「食べてきたからいいよ」と答えるつもりだったけれど・・

ひさかたチャイルド「ふうふうふう~」より

幼い日に、心にサンタクロースを住まわせた子は・・・

松岡享子さんの「サンタクロースの部屋」より抜粋です。

 

サンタクロースだけではなく、魔法使いでも、妖精でも、鬼でも仙人でも。

ものいう動物でも、空とぶくつでも、打出の小槌や岩戸を開けるおまじないでも。

幼い子にはこれらの不思議の住める空間をたっぷりとってやりたい。

子どもは 本来ふしぎを信じたがっているのだから。

こぐま社「サンタクロースの部屋」より

おじいちゃんとお別れの時が来た。

おじいちゃんの好きだった歌は三橋美智也の「古城」

♪松風騒ぐ 丘の上 古城よ独り 何偲ぶ~♪

 

若い時は麻雀もお酒も得意だった。

ゴルフも得意だった。

囲碁はずっと得意だった。

 

孫の誕生日には必ずケーキを注文してくれた。

腰に木刀、サーズデーとか言っていた。

 

90歳で自転車に乗っていた。

台所をキレイに使っていた。

 

96歳まで懸命に生き抜いたおじいちゃん。

もう、ゆっくりしていいよ。安らかに眠ってね。

論評社「わすれられないおくりもの」より