もう、帰ろうかと思って。

これは93歳になる母の口癖だ。

介護老人ホームに入居してもうすぐ1年になる。

スタッフの皆さんに優しくしてもらい、おいしいご飯も3食、欠かすことなく食べることができ、安心安全な場所なのだけれど、やはり自分の家ではないことは確かで・・・。

帰りたい場所が、母が子どもの頃に過ごした家で、入居前の実家ではないことが、さらに哀しい。

 

先日、施設で夏祭りがあった。はりきって参加したのはよかったが、ボウリング(ビーチボール)をしていて、バランスをこわして、転んでしまったらしい。幸いけががなくてよかった。その後も、たこ焼きを食べたりできましたとの報告あり。

また、昨日はネイルをほどこした、両手をみせてくれた。手はしわしわだけど、爪の格好はワタシよりよくて、ゴージャス!! 「よかねぇ。似合うとるよ。」 ハンドマッサージ込みで1500円也。ささやかな楽しみを施設は用意してくれている。有り難いことだ。

でも。やっぱり、口癖は「もう、帰ろうかと思って・・・」

徳間書店「エマおばあちゃん」より