さよなら、ピアノ

ワタシの最初のピアノの先生はカステラを上品に食べる人だった。

いつもきれいなハンカチを持っていた。

実家のピアノを処分することにした。

もう、半世紀以上も前のピアノは今日、無事、搬出された。

お別れに、ちょこっと弾いてあげればよかった・・・

 

生前の父に、大好きな「星影のワルツ」や「北国の春」など、弾いてあげたら、喜んでいたことをふと思い出した。にこにこ頷くだけで、もう歌うことはできなかった。10年くらいも前のこと。

ブロンズ新社「ピアノはっぴょうかい」より